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友人に捧げた入門者向け本部シリーズ。短編です。
全20話で、全員分の日常が綴れたので、こちらにも上げておきます。

藤野、風上、草薙、苑宮編。

※篝祇亜須磨
次は、藤野さんの部屋だ。
本部で一番食えない人は藤野さんだろう。
今でも好奇心という理由だけで人を騙している人だ。
一度絡まれたらやりにくい。
軽くノックしてから、部屋に入る。
「失礼します」
「どうしたのかな、亜須磨」
ソファーにゆったりと座りながら、コーヒーを飲んでいる藤野さん。
彼の友人である風上さん、草薙さん、苑宮さんは床に座っていた。
「白河さんから伝言です。明日、12時までにラウンジに集合だそうです。」
「12時な、分かった」
草薙さんが返事を返す。
これで用は済んだし、さっさと部屋を出ようとすると藤野さんに呼び止められた。
「ねぇ、亜須磨」
「なんですか?」
「君は、どうすれば騙されてくれるのかな?」
藤野さんらしくもない質問だ。
「何ていうのかな、風上ならすごく騙しやすい。僕の言葉でいくらでも駒に出来る。ほかの連中だってそうだ。操りやすいのがほとんどだ。だけど、君だけが操れない。」
「操る必要なんかねぇだろ。藤野は全て思い通りになると勘違いしすぎだ」
草薙さんがぶっきらぼうに言う。
それに対して藤野さんはくすりと笑うだけだ。
「全部思い通りになるとは思わないよ。ただ、亜須磨が僕の思い通りになったら面白そうだなってだけ」
「面白いわけあるかよ」
草薙さんは人を裏切り続ける藤野さんに対して、いい感情を持っていない。
だから、いつも言い争いになってしまっている。
風上さんと苑宮さんは何を考えているんだか分かりにくい人だ。
風上さんはきっと心から藤野さんに忠実なのだろうけど、苑宮さんはどうなんだろう。
「苑宮さんは、どうして藤野さんと一緒にいるんですか?」
「友達だからだよ」
返ってきた答えはありきたりなものだった。
「藤野に助けられたこともあるし、藤野を助けたこともある。友達ってのはそういうもんじゃないの?」
「苑宮は藤野に優しすぎだって」
先ほどと全然違う棘のない声で、草薙さんが苑宮さんに言う。
苑宮さんは、そんな草薙さんに微笑みかける。
「草薙だって同じじゃん」
「……全然違うって」
「まぁまぁ、仲良くしようよー」
「お前のせいで荒れてんだよ、バカ!」
風上さんには一層冷たい草薙さん。
風上さんはなんでか分からずに、怒鳴られて涙目になる。
「あの、俺もう行きますよ。忙しいので」
「まぁいいか。今度、じっくり話をしよう」
藤野さんがにこやかな笑顔で笑う。
したくないけど、またいつか、とだけ答えて部屋を出た。
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