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友人に捧げた短編集。
今回は、ハーレムをテーマに書いてみました。


イシア編

※瀬戸氷河
街。
名前もないただ大きな都市は、何度魔物に荒らされてもめざましい復興を見せた。
それは人の力も強く影響したが、最も貢献したのは魔族だろう。
本部に頼らないように自分の力で街を守れるようにと軍部を作り出したのも魔族だと聞いている。
その軍部のせいで、本部も俺も被害も被っているのだが、それはまだ別の機会に話すだろう。
街を歩いていると、女性に話しかけられた。
紅い髪が目立つ女性だ。
「やぁ、神血。珍しいなこの街で出会うなんて」
「……あ、あんたは」
「イシアだ。覚えてくれ。」
「そういや、名前は初めて聞いたな。」
そもそも会ったことも一度ぐらいしかない。
魔族である彼女と俺の接点なんて全然ないからな。
俺も自分の名前ぐらいは言おうかと思ったが、イシアに止められた。
「その必要はない。君の名は知っているよ。」
「名が知れてるからな……」
街で俺の名は裏社会的な方で有名だ。
魔術の精通している人間なら、俺の名を知らないものはいないんだろうな。
「いや、亜須磨が君の事を楽しそうに話していたからだが」
「亜須磨の知り合いだったな……。」
「知り合いではない、友人だ」
ドヤ顔で語るイシア。
何でか寂しい発言に聞こえたんだが……気のせいだろうか。
「そうだ。君の事を氷河と呼んでいいかな?」
「そりゃ構わないけど」
「そうか、それは嬉しいな。君――いや氷河も私の事はイシアと呼んでくれて構わない。みんな、そう呼んでくれるからな」
さて、とイシアは、近くにある喫茶店を指さして、俺を誘う。
「せっかく平和なんだ。ゆっくり話でもしてみないか?」
「そうだな。あんたと話をしてみたいとは思ってたんだ」
その誘いに乗って、一緒に喫茶店に入ることにした。
イシアの指した喫茶店は、お洒落な雰囲気で俺好みだった。
お茶をするなら綺麗なところじゃねぇとな。
まだ昼間であったためか人が少なく、すんなり席に案内してもらえた。
メニューも渡され、それぞれ見つめながら話す。
「私の好きな店なんだ。雰囲気も君好みかと思ったがどうやら正解のようだな」
「あんたの趣味か。分かってるじゃねぇか」
「人間にも綺麗好きとジャンク好きがいるというらしいからな。氷河はどう見ても綺麗好きの部類だと思ったんだ。」
「亜須磨に聞いたんだろ?」
「前情報というのも確かにあったが、実際会ってみて確信したよ。」
「そうか?」
「見た目というものは、自分ではよく分からないものだが、それは確かに己の人生経験や信ずる価値観を表しているものだよ。」
「へぇー……」
「氷河はまだ若いのだから、自覚出来ないかもしれないな。」
「うるせぇよ、長命だからって」
イシアがくすくすと笑う。
俺もメニューを置いていたのを見計らっていたのか、イシアが店員を呼ぶ。
イシアは店員とも親しいようで、何やら雑談をした後に注文を促す。
「君は?」
「あ、俺コーヒーで。ミルクとシロップはいらないので。」
「かしこまりました」
何やら嬉しそうな店員が、厨房に戻るのを見てからイシアに話しかける。
「……人脈広いな」
「どういう意味で言っているのかな、それは」
「そのままの意味だと思うぜ。あんな子とまで仲がいいとは思わなかった」
「それはコネクションの差だろう。私は街の英雄だ。皆が知る私だからこそあのような町娘から城に近いような連中まで、人脈がある。」
「羨ましい限りだな」
「私と君は真逆なんだよ。君は怪しい組織とのコネクションばかりだろう。」
「俺だって望んで出来たわけじゃねぇよ」
「いいや。きっと君が望んだことだよ。無意識的にも君はああいうものにあこがれていたんじゃないかな?」
「ああいうものって?」
「不良、マフィアといったそういう裏組織ってやつに。」
「そう言われれば……憧れてたのかもな。あいつらは自由だろ」
「裏組織といえど組織だ。統率されていたと思うが?」
「少なくとも俺には自由に見えたんだ。上流階級の方が束縛されてるってもんだぜ?」
「氷河が言うのなら、そうなのだろうな。」
ここで、お待たせしましたーと店員が二人分の飲み物を用意する。
イシアの手元に甘そうなロイヤルミルクティー。
俺は、変わり映えのないブラックコーヒー。
たまには紅茶にも手を出すべきだろうか。
いや、いいか。
来る前に随分喋ってしまったせいか、初めは黙々と飲んでいたが、中身が半分ぐらいまで減った所で、イシアがため息をついた。
「すまない、これは独り言だと思って聞き流してくれ」
「?」
「私は人あらざるものであり、人よりも遥かに強い力を持つものだ。強い力を持つならば、弱い人間を救うことが責務だと思っていた。私のこの信念は今でも変わらない。だからこそ、言いたいことというのもあるのだよ。」
黙ってコーヒーを啜る。
独り言だと言う割には真剣に俺を見つめている気がするのだが。
「君だって私にとっては弱き人間だ。街で何か追われているのなら、力になろうと思っている。だが、君もまた聡明で強い意志のある人間だ。助けようとする前に一人でなんとかしようとしてしまうのだろう。私はそれを止めさせたいんだよ」
なんだよ、その恥ずかしいセリフは。
イシアは言ってしまえばお堅い騎士のような人間だ。
弱い人間を救うために力を振るわなければならないなどという綺麗事を実際やり遂げる力のある人だ。
もうイシアを直視することも出来ず、目を伏せる。
「な、何が言いたいんだよ」
「私は君を守りたいと言っている」
真顔で答えられたら耐えられない。
力のある人ほど、誰かを守るだのくさい言葉を迷いなく吐いてしまう。
例えて言うなら、主人公のナイト思考は異常だと俺は思う。
その主人公が特別な力のある設定をされているから、そんな考えにいきつけるんだ。
そういうのは、違う気がするんだよな。
守るというその言葉は余裕の表れなのか、それとも。
「……よくもまぁ、そんな言葉が出てくるもんだな!」
「当然だろう。本心なのだから」
まっすぐすぎる。
彼女の迷いのなさが、羨ましいものだ。
「ずるいよなー……それ」
身体の体温が上がってる。
恥ずかしすぎる。街の英雄に守りたいだの言われるから!
近くにある水を一気に飲み干す。
そして財布から自分の分の代金だけテーブルにおく。
「帰る!この店、覚えとくからな!」
最低の捨て台詞だ。
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