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檻の中にいる貴方さえいれば。

・ケージインラブの魔術師
※瀬戸氷河
悪夢を見た。
俺が恭二に捨てられる夢。
檻の中にいた俺はいくら手を伸ばしても届かない。
夢のなかで何度も恭二の事を呼んだから寝言でも言ってたかもしれない。
恭二の姿が見えなくなりそうな時に目を覚ました。
「恭二ッ!」
起き上がり、手を伸ばす。
だが、掴んだのは空でありなにもない。
「檻にいるから、か……?」
奇妙な夢にうなされるとは思わなかった。
恭二においていかれるのなら、このまま檻にはいられない。
脱出しなくては。
けど、どうやって?
武器も魔術も通じない、蹴りで壊すのも難しい。
出口はない。やつの空間魔術の思いのままだから。
唯一に俺に干渉するのは、食事時のみ。
ならば、そのチャンスを大きくするしかない。
奴を誘導して、俺に触れようとさせる。
そこでやつが空間をあけた所を狙うしかない。
「やるしかねぇ、か。」
恭二が待ってんだからな。

規則正しく朝食を用意する魔術師。
今回は、和食セットだった。
よくわかんねぇな、こいつ。
「さぁ、食べてみてくれよ」
「はぁ……いただきます」
今回も味は普通だった。
俺が好きな味じゃねぇんだよな……。
絶対言わねぇけどさ。
「味はどうだい?」
「普通」
「……そうかい。残念だ。」
魔術師が食器を下げる。
下げながら、魔術師は話始めた。
「最近、僕らを嗅ぎまわる奴がいるんだ。君を外の世界に出そうとしているみたいだ。困った連中だよ。君はこの中にいてこその存在なのに。」
「俺はここから出せってずっと言ってんだろ。」
「いやいや、困るよ。君はずっと僕が守ると決めたんだ。誰にも邪魔はさせない。」
「そういう保護のされ方はもううんざりなんだよ……」
俺を守るために閉じ込める。戦わせてくれない。
そんなのはもう、嫌なんだ。
見ているだけはもう無理だ。
だから、力を望んだ。魔術を望んだ。技術を望んだ。
食器を下げてから、戻ってきた魔術師に問いかける。
「なぁ、魔術師」
「なんだい?」
「ここから出してくれよ」
「それは無理だって、昨日もいっただろう?」
魔術師が呆れて答える。
「……これでもか?」
俺は隠し持っていた丙の毒針を自分の腕に刺す。
魔術師が顔面蒼白になる。
「き、君は何をしてるんだい!?」
「う、ぐっ……やっぱきついなこれ……」
丙の毒は、動きを止める物がほとんどだ。
ふらついて、格子を掴んで支える。
「……なぁ、どうすんだよ、魔術師。俺……このまま、だと……死ぬぜ?」
「そんなの……僕がさせるわけないだろ!?」
魔術師が焦って空間術を使い、俺に触れようとする。
異空間から伸ばされた腕をとり、引っ張る。
そして俺は、魔術師と入れ替わるように脱出した。
「な……っ!駄目だよ、君!」
「脱出してやった……ざまぁ、みやがれ……っ!」
無理矢理体を動かす。
神血は多少毒に耐性がある。
「お前さ、俺の名前も知らねぇで、好きだとか言ってんの?ありえねぇっつの!」
「僕は姿を見れただけでよかったんだ。君の事はなにも知らなくても愛せる。」
「それが気持ち悪いって言ってんだよ!愛だの軽々しく言ってんじゃねぇ、気持ち悪い。そんなものに溺れるほど俺は出来ちゃいねぇよ!」
言いたいことを言ったら、丙の毒がまた回ってきた。
「は、っ……とっくに俺は恭二のものなんだ……魔術師なんかに、奪われてたまるかよ……!」
「君は」
魔術師が格子を抜ける。
魔術師が無数のナイフを宙に浮かべている。
「標本の方がいいのかな」
「それも、お断りだ!」
奴がナイフをおれにさすより早く、氷壁を作る。
だが、四方を囲まれていることに気づけなかった俺は背中に4,5本のナイフが刺さる。
「ぐぁ……ッ!?」
「ははははははは!僕は、人間標本なんか作ったことないけど、頑張ってみるよ!さぁ、死んでくれ!」
毒と背中の燃える痛みに、耐えかねて意識を離しそうになるが、拳を強く握る。
こいつだけは、俺の手で仕留めたい。
「俺が……殴らねぇと、気がすまねぇだろ……ッ!」
氷壁は脆くも割れて、倒れる。
魔術師はけらけらぶっ壊れたように笑いながら、ナイフを手にする。
「ははははははは、っふふふふふふ」
動けないんだから、一瞬でけりをつけろ。
一瞬だけでも、俺の体を動かせ。
ナイフを刺してきた魔術師に、かわして最後の一撃を入れろ。
出来るだろ、俺はもう……弱くねぇんだから!
「もーいいでしょ、茶番は」
「そうだね、見てらんないよ」
「じゃあ、俺の出番ってことだろ?」
「ううん、俺一人でいいでしょっ!」
誰かが俺のそばを走り抜けて、魔術師を吹き飛ばす。
その人は、俺を見下してドヤ顔で言う。
「雨境さま、参上! ってね」

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氷河一人で事件が終わるわけないない。
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