未来を見通せる能力を使ってみよう。

・スイーツ盗み食い事件
※手仕舞柳賀
鹿屋さんに銃口を向けられる俺。
絶体絶命である。
「鹿屋さん、俺もモンブラン買ったんですよ。」
「で、自分の分をちゃんと食べたとでも主張したいんですか？」
「そうです！俺は人のものとか食べませんから！」
「確認しました？」
言葉に詰まる。
俺が夜食を食べたのは、深夜のことだから明かりが少ない。
俺は自分のモンブランだと確信してしまっていたから、名前が書いてあったとしても確認したという自信はない。
「……確認してないんですね？」
「ええ、俺のものだと思ってましたから……」
鹿屋さんがため息をつく。
「氷河、これ実弾でます？」
「……弾は入ってます」
ひえぇ、殺される！
殺されなくとも痛い思いはする！
「俺、すっごく楽しみにしてたんですよ、あれ食べるのを。」
「モンブランおいしいですもんね……」
「食べ物の恨みって怖いですよね、手仕舞」
「…………はい」
死を覚悟した瞬間、食堂に誰かが入ってきた。
「なにしてんの？氷河たち」
「あ、いや、これは……」
雨境だ。
何とも答えることが出来なかった氷河を無視して、ふらふらと冷蔵庫に向かい開ける。
「お、今日は水ようかんあるじゃーん。」
「それは私のです、雨境」
「東火さん！」
東火さんが戻ってきてくれた！
抱きつきたかったけど、俺は動けないから堪える。
「まだやってたんですか……」
俺たちを見て、東火さんはため息をついた。
でも、すぐに雨境を冷蔵庫から引き離す。
「げ、兄貴のかよ」
「そうやって人のもの取ろうとして、ろくでもない猫ですよ」
「いいじゃん、食わないのが悪いでしょ」
雨境は全く謝る気がなさそうだ。
反省もしてない。
東火さんが、お湯を沸かしながら話した。
「鹿屋君のモンブランを食ったのは、確かに手仕舞君です。でも、その前に手仕舞君のモンブランはこの猫が勝手に食べました。」
俺は雨境を指差す。
「それじゃ、おまえのせいじゃん！」
「にゃんだよ、悪い？」
「後、瀬戸君の探してるプリンとやらも、この猫が食べました」
「元凶じゃねぇか……」
氷河も呆れてため息をつく。
すぐに銃を雨境に向ける。
「覚悟はできてんだろうな？」
「あれ、氷河のだったの？」
「いや恭二のだ。……じゃなくて！お前は反省しろ！」
雨境がすぐに逃げ出した。
氷河が雨境を捕らえようと出ていった。
鹿屋さんは、今まで俺につきつけていた銃をテーブルに置く。
「雨境の方は氷河がなんとかするでしょう。手仕舞、今度は確認を怠らないように」
「は、はい……」
怒られただけで済んだのは、幸いだ。
鹿屋さんはコーヒーを入れて食堂を出ていった。
お茶を入れた東火さんが、向かいに座る。
「ね、厄日だったでしょう」
東火さんが微笑む。
思えば、全部東火さんの言う通りだった。
俺がひどい目に合うのも、銃が関連することも。
「すごい、全部東火さんの言う通りだったんですよ」
「手仕舞君は、私の能力ってご存じですか？」
「東火さんの……？」
弓ヶ浜の一族で、狐の妖怪になれる東火さん。
その恩恵で、未来をちょっと見る能力があったはずだ。
「未来を見る、やつですか？」
「そうです。私は数分先の未来を見ることができる。だから、手仕舞君の不幸を予言したんですよ」
「だったら、防いでくれたりとかしてくれてもよかったのに。」
「それはできないんですよ。私が見える未来は確定された、変えようのない数分先の未来ですから」
へぇー、と頷いた。
東火さんの能力にそんな制限があるなんて。
東火さんは、話を続ける。
「この能力で、村人から金を奪い取った時期がありましてね。」
「金をとる！？」
「占い師として、未来を見たんです。そしてそれを占いっぽく言って金儲けしたんですよ」
東火さんにもそんな黒い時期があるなんて、知らなかった。
俺はまだ東火さんのこと、なにも知らないんだ。
「東火さん、何で俺に厄日を教えてくれたんですか？」
ストレートに聞いてみると、東火さんは目を逸らした。
「……ただの善意ですよ」
「うわ東火さん、かわいい」
「言わなきゃよかったかな」
そういう東火さんの慣れない照れ隠しが俺は好きなんです。

「あれ、じゃあなんで犯人を知ってたんですか？未来を見たから？」
「いえ、知っていたからです」
「……防げたよね、これ」
「嫌ですよ、手仕舞君の弁護するの」

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ちょっと王道らしいてしとうか。